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大きく変わる診療所経営の構図

(提供:MMPG)


■開業医のあり方が大きく変わる

 今、厚生労働省が進める一連の医療制度改革の概要を端的な言葉で言い表すとするならば「医療提供体制の更なる効率性追求により医療費の適正化を図る」ということに収斂されるのではないでしょうか。

医療提供体制の効率性追求とは、言うまでもなく医療機能の分化と有機的連携を意味します。
 
 新医療計画に新たに加えられた4疾病5事業は、文字通りの地域内ネットワークの構築を目指すものですし来年度から創設される後期高齢者医療制度在宅主治医を中心とする連携体制による医療提供体制の定着を目指すものです。
 政府が2011年を目途にプライーマリバランスの達成を目指す中、逼迫する医療財源で加速度的に進む少子・高齢化社会の下で医療制度を維持するには、もはや医療機能の分化と有機的連携を、これまでのような「掛け声」的なレベルではなく現実のものとする必要に迫られていることは間違いありません。
 つまり、従来の病院を中心とした制度改革とは異なり、今、厚生労働省が推し進めようとしている医療制度改革は国民皆保険制度の維持を賭けた未曾有のプロジェクトと言うことができます。そして開業医のあり方についての見直しもその例外ではないということです。

■厚生労働省が示す開業医の将来像
 
将来における開業医のあり方は大きく二つの方向から示されています。

 ひとつは新医療計画下におけるかかりつけ医としての機能であり、もうひとつは後期高齢者医療制度創設に伴う在宅医療の担い手としての機能です。
 新医療計画では、住民・患者を中心に据え、従来の「医療機関完結型医療」から「地域完結型医療 の構築を目指す中で、例えば4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)について言えば初期診療の有無に関わらず、かかりつけ医による急性期から回復期、亜急性期までの医療機関紹介及び相談機能、退院後の在宅における継続的な医療の提供を期待しています。

 また、後期高齢者医療制度創設に関しては、在宅主治医を中心とした緊急時における病院との連携から総合的な在宅医療のコーディネート、さらには看取りまでを開業医の役割として位置付けています。まさに患者視点に立った、全人的なかかりつけ医としての機能を求めているのです。
 
 一方で、厚生労働省は総合的な診療能力を備えた総合科(総合医)の創設(養成)も視野に入れています。
 これは英国におけるGP(General Practitioner)に相当するものであり、人間全体を診る総合的な診療を行える医師を確保することで、ゲートキーパーとしての役割(病院の外来集中回避)を期待しているものと思われます。

 そのような意味で、将来的にはこの総合医(あるいは総合診療医)こそが、かかりつけ医の役割を担うことになると見ることも出来ます。

■これからの開業医に求められるもの
 
 「医療政策の経緯、現状及び今後の課題について」では、開業医機能の明確化とするなかで、24時間体制構築のための複数診療所のチーム化や同チーム医療を活かした研修体制(OJT)の構築、患者振り分け機能の構築等についても言及しています。

 これらを総合的に見ると厚生労働省はかかりつけ医機能を限りなく欧米型のシステム、即ち患者の流れを診療所から病院へという文字通りのゲートキーパーとしての役割と同時に、終末期医療の担い手として位置付けていると言えます。

 つまり同省が示した「午前中は外来、午後は往診、訪問診療」という考え方こそがこれからの開業医の基本診療形態となる可能性を秘めているのです。

 ここで留意すべき点は在宅という言葉の持つ意味です。今次医療法改正で医療法人の附帯業務としてケアハウスに加え、有料老人ホーム並びに追加的措置として高齢者専用住宅の運営が認められることとなりました。

 すなわち在宅とはこういった多様な居住の場を含むものであり、診療効率という観点から言えば、従来とは比較にならないほどに高まることが予想されるのです。

これは言うまでもなく、平成24年度における介護療養病床廃止に密接に連動するものです。

平成18年度診療報酬改定で創設された在宅療養支援診療所への高評価は、究極的には「それでも在宅の方が安くつく」という試算に立脚するものに他なりません。
 
 最終的に消滅」する23万床のうちどれだけがいわゆる『居宅の場』にシフトするかは今のところ不透明ですが、看取りも含め従来の施設医療の多くが今後開業医に委ねられることを考えれば、後期高齢者医療への積極的取組みは当面順風であると言えます。

■勤務医との格差是正はあるか

 5月18日付日本経済新聞が一面トップで厚生労働省方針として報じた「開業医の初診・再診料引き下げ」に関する記事は大きな波紋を呼びました。

 厚生労働省は同日、記事内容を否定し、日本経済新聞社に対して厳重抗議を行っていますが、同記事では初・再診料引き下げの理由として(1)勤務医との収入格差是正、(2)開業医の時間外診療や往診への収益源シフト、(3)開業医シフトの解消(勤務医不足の是正)―等を挙げています。

 概観するかぎり同記事が示す方向性そのものは診療報酬上の評価は別として、道理に適っているようにも見えます。

 すなわち機能分化を図る上で、しかも医師の偏在、過重労働等が問題視されている中で、病院の一般外来を資源の浪費として同省が認識していることは間違いありません。

 勤務医の労働環境悪化は、医療訴訟件数の増加と併せて大きな社会問題ともなっています。自由開業制のもと、勤務医が開業へ走る理由が勤務時間の長さや報酬の低さにあるとすれば、限られた財源の中で、収支面でゆとりのある診療所をターゲットとしてこれを診療報酬で是正しようとする動きが出てくることは至極当然のことと思われます。

 また、開業医の時間外診療や往診への収益源シフトについては、これまで述べてきたようなかかりつけ医機能の見直しという観点からすれば当然予期されることと言えるでしょう。

■待ちの時代への決別こそが成功へのカギを握る

 これまで述べてきたように、新医療計画、後期高齢者医療制度の導入を機に開業医のあり方は大きく変わることが予想されます。
 
 これを悲観的に捉える必要はありません。むしろ新たなマーケットの創出と見れば、診療所経営発展の可能性は無限の可能性を帯びているとも言えます。

 但し、従来型経営、即ち待ちの経営の時代との決別は必要です。

 機能分化策を踏まえた「出る医療」へのシフトと患者視点での24時間体制の確保こそが成功へのカギとなります。

 平成20年度診療報酬改定においても改めてこれらを評価することとなるでしょうし、逆説的にはこういった体制を敷いていない診療所にとっては大きなマイナスとなることも考えられます。

 つまりこれからの診療所経営にあっては「地域医療への貢献度」がそのまま経営成果として反映する時代を迎えようとしているのです。そのキーワードこそが、24時間体制の確保(有機的連携)であり、「出る医療」なのです。そしてこれらを体現する形として真の意味でのかかりつけ医があるのです。

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